
長年マンドリンアンサンブルで活動されていたというお客様が、「楽器を弾く機会が減り、手入れが行き届かなくなってしまったので、大切にしてくれる方に譲りたい」とご来店されました。手放すことに少し寂しそうな表情を浮かべつつも、楽器が再び誰かの元で美しい音色を響かせることを願っていらっしゃり、その想いをしっかりと受け止めて査定をさせていただくことになりました。拝見したのは、日本の弦楽器製作の聖地ともいえる岐阜県恵那市で丁寧に作られた「ENA Mandolin elite EM-70」でした。このモデルは、表板に厳選されたスプルース、裏板や側板には杢目の美しいメイプルが使用されており、職人のこだわりが随所に感じられる「エリート」の名に恥じない素晴らしい仕上がりの一本です。長年ケースの中で保管されていたとのことでしたが、楽器の状態は非常に良好で、マンドリン特有の繊細な木材の割れや大きな傷も見当たらず、この楽器が前オーナー様の手でどれほど丁寧に扱われてきたかが一目で分かりました。専門的な査定を行う際、私が最も細かく確認したのは、楽器の心臓部ともいえる表板のコンディションと、ネックの反り具合です。マンドリンは弦の張力が非常に強く、保管環境によっては表板が歪んだり、サウンドホール周辺に亀裂が入ったりすることが珍しくありません。しかし、今回のお品物はブリッジの設置状態も安定しており、フレットの摩耗も演奏に支障がない範囲でした。また、ペグの回転も滑らかで、チューニングを維持するためのメカニズムも健康的な状態でした。恵那楽器の製品は国産ならではの精緻な作りが特徴であり、中古市場でも非常に需要が高いため、楽器本来の価値と状態の良さを考慮し、自信を持って最高額を提示いたしました。楽器をお持ちの方にはいつもお伝えしていることですが、特にマンドリンのような繊細な木製品は、ご自身で不調を直そうと安易に修理を試みることは控えてください。例えば、小さなヒビ割れを見つけて市販の接着剤で埋めてしまうと、木材の振動を阻害するだけでなく、専門家による本来の修復が不可能になってしまうことがあります。また、極端な乾燥や湿気は楽器にとって最大の敵です。保管の際はケースに入れて、できれば湿度調整剤を併用するなど、環境を安定させることが楽器の寿命を大きく左右します。もし不具合を感じても、専門知識を持つ私たちが適切にメンテナンスを行うことができますので、どうかそのままの状態でお見せください。今回、お客様には納得いただける査定額を提示することができ、また新しい場所でこのマンドリンが奏でられることに安堵されていました。楽器はただの物ではなく、奏者と共に時間を重ねるパートナーです。その価値を正確に見極め、次の世代へとバトンを渡す役割を担えることを、私たちはいつも誇りに思っています。もし、あなたのお手元にも眠っている弦楽器がございましたら、ぜひ一度気軽にご相談ください。楽器の歴史と状態を専門の視点でしっかりと拝見させていただきます。

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